Amazonベストセラー『がん治療選択』の続編を綴る。
10月6日(水)
オペの当日、朝からスポーツドリンクで空腹をまぎらわせていると、8時過ぎ、女医を先頭にA先生、そして門田先生が回診にやってきた。
「変わりはないですよね」
女医がそう言うと、3人は病室を見回す。ゴミ箱には日清カップヌードルのカップが転がっている。本当に夜中、食べたのか……そう心の中で苦笑しているかもしれない。
「では、のちほど」。そう言うと、3人は踵を返して去っていった。
昼過ぎ、ようやく内視鏡センターに呼ばれる。いつものように受付を済まして、待合室のイスで座っている。普段の検査と違うのは、今日は私服ではなくて、入院用のパジャマを着ていることだけだ。まったく緊張感はない。
予定時間が過ぎても呼ばれない。かなり検査や手術が多く、時間が押しているのだろう。
午後2時すぎ、ようやく看護師が呼びに来た。
診察室に入ると、門田先生など3人が待っていた。
「ここに横になってください。ちょっとシートは冷たいですよ」
ゆっくりと横になる。ひんやりとしたシートが肌に触れる。
「あれ、もっと反応するかと思ったのに」
門田先生がおどける。
「いや、あんまり先生が冷たい冷たいって言うから、反応しちゃいけないのかと思ったっす」
マスクの奥で、門田先生の顔がほころぶ。私も笑いながらマスクを外す。
診察室が暗くなり、オペが始まる。麻酔が入り、意識が朦朧としていく。
……あれ。
徐々に意識が回復してくる。暗い診察室で、目の前にモニター画面が明るく光っている。そして、痛みが襲ってくる。
——麻酔が切れてきたのか。打ち直してくれないのだろうか。
目を開いて、意識が戻ったことをアピールしたが、麻酔が打たれる気配はない。痛みが激しくなってくる。
——聞いていなかったが、こんなに激痛をともなう手術だったのか? それとも、たまたま麻酔の効きが悪いだけなのか。
身悶えるように体をねじる。看護師に支えられるが、かなり痛い。