日記録 2021/10/6〜10/8

文:金田 信一郎

Amazonベストセラー『がん治療選択』の続編を綴る。

 

10月6日(水)

 

オペの当日、朝からスポーツドリンクで空腹をまぎらわせていると、8時過ぎ、女医を先頭にA先生、そして門田先生が回診にやってきた。

「変わりはないですよね」

女医がそう言うと、3人は病室を見回す。ゴミ箱には日清カップヌードルのカップが転がっている。本当に夜中、食べたのか……そう心の中で苦笑しているかもしれない。

「では、のちほど」。そう言うと、3人はきびすを返して去っていった。

昼過ぎ、ようやく内視鏡センターに呼ばれる。いつものように受付を済まして、待合室のイスで座っている。普段の検査と違うのは、今日は私服ではなくて、入院用のパジャマを着ていることだけだ。まったく緊張感はない。

予定時間が過ぎても呼ばれない。かなり検査や手術が多く、時間が押しているのだろう。

午後2時すぎ、ようやく看護師が呼びに来た。

診察室に入ると、門田先生など3人が待っていた。

「ここに横になってください。ちょっとシートは冷たいですよ」

ゆっくりと横になる。ひんやりとしたシートが肌に触れる。

「あれ、もっと反応するかと思ったのに」

門田先生がおどける。

「いや、あんまり先生が冷たい冷たいって言うから、反応しちゃいけないのかと思ったっす」

マスクの奥で、門田先生の顔がほころぶ。私も笑いながらマスクを外す。

診察室が暗くなり、オペが始まる。麻酔が入り、意識が朦朧もうろうとしていく。

……あれ。

徐々に意識が回復してくる。暗い診察室で、目の前にモニター画面が明るく光っている。そして、痛みが襲ってくる。

——麻酔が切れてきたのか。打ち直してくれないのだろうか。

目を開いて、意識が戻ったことをアピールしたが、麻酔が打たれる気配はない。痛みが激しくなってくる。

——聞いていなかったが、こんなに激痛をともなう手術だったのか? それとも、たまたま麻酔の効きが悪いだけなのか。

身悶えるように体をねじる。看護師に支えられるが、かなり痛い。

有料記事(月500円で全記事閲読可)

会員登録・ログインして定期購読を開始する

Page Top Photo by
http://www.flickr.com/photos/armyengineersnorfolk/4703000338/ by norfolkdistrict (modified by あやえも研究所)
is licensed under a Creative Commons license:
http://creativecommons.org/licenses/by/2.0/deed.en