日記録 2021/6/30〜7/1

文:金田 信一郎

Amazonベストセラー『がん治療選択』の続編を綴る。

 

6月30日(水)

 

数カ月前から、左肩が痛むようになった。朝、起きると肩のあたりがっている。ベッドの中で肩を動かして、少しほぐれてきてから起き上がる。

「これは、きっと五十肩だな」

そう思って、当初はさして気にしていなかった。だが、痛みは日ごとに強まっていく。ついに、左手を横に上げると、水平になる辺りから激痛が走るようになった。

風呂に入る時、鏡に映った体を見る。肩には特に異常はないように思えた。それにしても、大きな治療を乗り越えたが、筋肉は落ちていない。体脂肪率も6%台で推移している。昨年秋には、喉から胸にかけて、放射線の火傷のあとが黒く広がっていたが、それもすっかり消えている。

頭髪も生えてきて、今では長い髪型になった。そして、治療の唯一の痕跡が残っている。ストレートだった髪質が、抗がん剤によって天然パーマになった。しかも、かなり癖が強い。

それでも、ここにきて生え際からストレートに戻ってきた。おそらく、あと1年ほどでストレートの頭髪に戻るだろう。それはそれで寂しい気もする。

——ストレートに戻ってしまったら、少しパーマをかけようかな。

そんなことを考えながら、鏡の前で、両手を上げてみた。

左肩に激痛が走る。

痛みをこらえながら、手を前に伸ばす。すると体の異常に気づく。

右肩は、付け根の筋肉が盛り上がるが、左肩はぺっこりへこんだままだ。

肩が落ちている……。

これは、深刻かもしれない。しばらく、鏡の前で呆然と立ち尽くした。

 

7月1日(木)

 

近所の整体クリニックに着いたのは午後3時過ぎのことだった。コロナ禍のため、ほとんど待たずに診察がはじまった。

レントゲンの画面をT先生が見つめている。

「うーん、左肩には特に問題はありませんね」

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