Amazonベストセラー『がん治療選択』の続編を綴る。
6月30日(水)
数カ月前から、左肩が痛むようになった。朝、起きると肩のあたりが凝っている。ベッドの中で肩を動かして、少しほぐれてきてから起き上がる。
「これは、きっと五十肩だな」
そう思って、当初はさして気にしていなかった。だが、痛みは日ごとに強まっていく。ついに、左手を横に上げると、水平になる辺りから激痛が走るようになった。
風呂に入る時、鏡に映った体を見る。肩には特に異常はないように思えた。それにしても、大きな治療を乗り越えたが、筋肉は落ちていない。体脂肪率も6%台で推移している。昨年秋には、喉から胸にかけて、放射線の火傷の痕が黒く広がっていたが、それもすっかり消えている。
頭髪も生えてきて、今では長い髪型になった。そして、治療の唯一の痕跡が残っている。ストレートだった髪質が、抗がん剤によって天然パーマになった。しかも、かなり癖が強い。
それでも、ここにきて生え際からストレートに戻ってきた。おそらく、あと1年ほどでストレートの頭髪に戻るだろう。それはそれで寂しい気もする。
——ストレートに戻ってしまったら、少しパーマをかけようかな。
そんなことを考えながら、鏡の前で、両手を上げてみた。
左肩に激痛が走る。
痛みをこらえながら、手を前に伸ばす。すると体の異常に気づく。
右肩は、付け根の筋肉が盛り上がるが、左肩はぺっこり凹んだままだ。
肩が落ちている……。
これは、深刻かもしれない。しばらく、鏡の前で呆然と立ち尽くした。
7月1日(木)
近所の整体クリニックに着いたのは午後3時過ぎのことだった。コロナ禍のため、ほとんど待たずに診察がはじまった。
レントゲンの画面をT先生が見つめている。
「うーん、左肩には特に問題はありませんね」