Amazonベストセラー『がん治療選択』の続編を綴る。
2月14日(日)
翌日の定期検査を前に、いつものように、柏の葉キャンパス駅前にある三井ガーデンホテルに前泊する。
チェックインして、ギターケースを部屋に置くと、ホテルを出る。冬の寒風がビルの間を吹き抜ける。肩をすくめるようにして、斜め前にあるタリーズコーヒーに入る。
いつもの窓際の席で、パソコンを開く。昨年末から書き始めた闘病記はすでに書き上がり、次作に向けて構想の断片を書き始める。
思い返せば、1年前の2020年2月、前作を書くため、新潮社の裏手にある「新潮社クラブ」に篭っていた。かつては三島由紀夫や開高健など作家たちをカンヅメにして、執筆にあたらせた伝説の宿である。今では、締切を破る豪傑もすっかり減って、利用形態も変化していきている。少女雑誌のロケで、専属モデルが地方在住の場合、ここを前泊に使うこともある。
遅筆の私は、ありがたくも、担当編集者から新潮社クラブでのカンヅメを打診された。
「金田さん、よろしかったら、好きな日程で使ってください」
自分を追い込むこともできるし、乗らない手はない。原稿ギリギリまで粘る性格が功を奏したとも言える。利用限度いっぱいの半月間、使わせてもらった。ちなみに、この施設は2階建てで、各フロアに作家1人だけが宿泊する。誰にも邪魔されない空間となる。朝食は指定した時間に、好みの食事を作ってくれる。昼食、夕食は周辺の店で勝手に食べるのだが、その食費も新潮社がもってくれる。