現代の片隅

釜ヶ崎物語:第2話「福祉の街」

現代の片隅(5) (篠原匡 ジャーナリスト、元吉烈 映像作家)

大阪・西成区にある「あいりん地区(通称、釜ヶ崎)」。隆盛を誇った高度経済成長期からバブル期にかけて、ここには肉体労働で日々の糧を得ようと、若い労働者が大挙して訪れた。だが、超高齢化社会の今、住人の多くは単身の年老いた元労働者ばかり。警察署を焼き討ちするなど血気盛んだった街は、その役目を終えつつある。釜ヶ崎の今を映像で追った。(篠原匡 ジャーナリスト、元吉烈 映像作家)

大阪の一角に、地図にない街がある。大阪市西成区にある「あいりん地区」、通称「釜ヶ崎」と呼ばれる場所だ。日雇い労働者の町と言われた釜ヶ崎は高度経済成長期から1990年代前半のバブル崩壊直後まで、仕事を求める労働者であふれかえった。彼らの存在なくして、日本の高度経済成長とインフラ建設は実現しなかっただろう。

だが、大勢の労働者で賑わった釜ヶ崎も、公共事業の減少と高齢化の加速で様変わりしている。街ですれ違うのは年老いた元労働者ばかり。地域の男性比率が80%、60歳以上の男性高齢者が41%、生活保護受給世帯が40%と、高齢の貧困男性ばかりが集まる、世界でも類のないいびつな街になっている。

静かに老いていく釜ヶ崎に生きる人々と大都市における超高齢化社会の日常、そして彼らを支える重層的に張り巡らされるセーフティネットの存在とは──。第2話「福祉の街」では、地域の高齢者を支えるセーフティネットを見ていく。