現代の片隅

世代を超える孤高のドン・キホーテ

現代の片隅(3) (文:篠原匡 ジャーナリスト)

四国の山奥に、山野草好きに愛されている植物園がある。シャクナゲやヒメシャガの群生に加えて、レンゲショウマやシコクカッコソウなど希少な400種の山野草が咲き誇る。今でこそ多くの観光客が訪れる美しい場所だが、もともとはただの雑木林。開発とともに失われていく山野草の状況に心を痛めた一人の男が、私財を投じてつくり上げた。自然保護と地域おこしに人生を賭けた男と、その志を継ぐ息子の物語。(文:篠原匡 ジャーナリスト)

四国の山奥に、山野草好きに愛されている植物園がある。四国山岳植物園「岳人の森」。山深い徳島県神山町の最深部、土須峠に近い標高1000メートルの高地に開けた天空の植物園である。

ここには1500株のシャクナゲをはじめ、ヒメシャガやレンゲショウマ、シコクカッコソウなど、地域に自生する400種の希少な山野草や高山植物が植えられている。とりわけシャクナゲが咲く5月上旬は山肌が薄桃色に染まる。その美しさは、来訪者が思わず息を呑むほどだ。

2020年のゴールデンウィークは新型コロナウイルスの影響で休園状態だったが、例年であれば、5月の大型連休の時期は大勢の観光客で賑わう。

希少な山野草を扱う植物園は他にもある。その中で岳人の森が唯一無二な存在なのは、一人の男が私財をなげうって、ハンズオンでつくり上げた純民間の植物園というところにある。自然保護と地域おこしに人生を賭けた信念の男と、その志を継ぐ息子の物語を紡ぐ。

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