再発の行方(30)

次なる治療選択へ (文:金田 信一郎)

抗がん剤治療の前日から、がんセンターに近いホテルに宿泊した。いつもの駅前のホテルが満室のため、病院に隣接するパークサイドホテルに泊まり、朝7時過ぎにチェックアウトする。

ホテルを出れば、そこはがんセンターの敷地内で、病院に裏側のドアから入ることができる。徒歩2分といったところか。

血液検査を終えて、ドトールで朝食をとりながら前回の診察のことを思い返してみる。

抗がん剤の効果が薄れてきたのか、腫瘍が縮小しなくなってしまった。次のCT検査の結果によっては、治療が変わっていく可能性がある。そこは、確認していかなければならない。

K医師の診察室に入る。 

「次回のCT検査なんですけど、1カ月後に入れようと思っているんですけど」

CT検査は2カ月ごとで、今回は久々に胃カメラ(内視鏡)もやることになった。

私は気になっていたことを質問した。

「この前のCT検査は、詳しい結果が出てきたんでしょうか?」

前回CTはK医師の見立てを聞いたが、読影の専門医が見た「詳しい結果」はまだ聞いていなかった。

「『所見なし』でした」

「所見なし?」

「そうですね。大きな変わりなし」

やはり、腫瘍は縮小していなかったことが確定したわけだ。前回のCTでは、4個の腫瘍のうち小さい3個が縮小していた。

「先生、『変わりなし』というのは、大きいヤツは2センチで変わりなし、ということですか?」

「前のCTと比べて変わりなし、となりますね」

「残りの3個は? 一度は小さくなった3つの腫瘍も、今回は小さくなっていない?」

「そうですね。うん」

そうか。せっかく縮小してきたのだから、同じ抗がん剤を続ければそのまま縮小すると楽観視していた。そうは甘くない。

「そうすると、抗がん剤は、効かなくなってきた、と」

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