再発の行方(26)

遺伝子パネルと治験

午前10時、国立がんセンターの内科、K医師の診察室に入った。

「今日はお体、いかがですか?」

K医師のいつもの問いかけで診察が始まる。

「暑いですね。それで、だるいかもしれません」

そう言って笑った。

「そうですよね。暑いですもんね」

うむ。体調を聞かれても、とりたてて痛みなどはないので、なんとなくの怠さぐらいである。猛暑なので当然なのかもしれない。

「まあ、特に副作用のようなものは感じていません」

そう言うと、K医師が朝に行った血液検査の結果の紙を出す。

「血液、問題ないですね。なので、今日、抗がん剤をやりましょう」

「はい」

これで、無事に治療が受けられる。

で、気になっていたガンの状況を聞く。

「先生、前回のCTなんですけど、(専門家による)読影の結果は出てきているのでしょうか?」

K医師はパソコンを操作する。

「出てますね。『異常なし、小さくなっています』ということです。そのほかの指摘もなさそうですね」

これまで見つかった4つの再発ガン以外には、新たな所見はないということだ。

少しほっとして、最大の懸念事項を聞く。

「一番、大きい腫瘍は、やっぱり縮小していなかった?」

「ぱっと見た感じ、そうですね。そこは指摘はないですけど、全体を通して縮小しているという判断かな、と」

「なるほど……」

つまり、明らかに小さくなっているわけではないが、4つの再発ガンは基本、同じ原発ガンの由来と考えられるので、最大の2センチのガンも含めて、全体として縮小傾向にあるということだろう。まあ、大きくなっていないだけでも「よし」としなければならない。

K医師が続けた。

「で、あと、遺伝子パネル検査の結果が出てきました」

2カ月前に依頼したものだ。アメリカで解析して結果が戻ってくるので、相当な期間を要すると聞いていた。もう2カ月ほど経ったわけだ。

「結果、どうでしたか?」

有料記事(月500円で全記事閲読可)

会員登録・ログインして定期購読を開始する

Page Top Photo by
http://www.flickr.com/photos/armyengineersnorfolk/4703000338/ by norfolkdistrict (modified by あやえも研究所)
is licensed under a Creative Commons license:
http://creativecommons.org/licenses/by/2.0/deed.en