読者の方からお便りが届いた。
ピンクの封筒に丸文字で、
「編集部気付き 金田信一郎様」
と書かれている。
ひっくり返すと、裏には「読者より」とある。
普通じゃねーな、これ。
封筒を開ける。
中から、キラキラしたラメ入りの桜カードが出てきた。飛び出す絵本のように、桜の木が立体的になり、小鳥が2羽とまっている。
1羽の小鳥には、「ものすごく多くの読者」と書かれている。
下の小鳥は「金田さん」と名付けられ、上にいる小鳥を見上げて目を丸くしている。
心がほっこりする。
メッセージが添えられている。
「金田様 お花のカードが送りたくて送りました。かわいいでしょ?」
……うむ。心を揺さぶられた。
もの書きを35年やってきたので、読者から手紙をもらうことはある。だが、こんなの初めてだ。
この読者は、おそらくビジネス文書を書いたことがない。なにせ、文章が途中で2行に分裂し、また1行に戻ったりしている。
自由である。
「まずこのコラムから読んでいます」という。有り難いっす。
我々出版人は読者の高齢化に悩み、「今の読者とともになくなる」ことを危惧している。いや、かなりの確率でそうなってしまう。
だからして、若い読者やこれまで経済誌を手にしなかった層を惹きつけようと苦闘してきた。
だが、ことごとく失敗した。
だからして、これは一縷の望みのような手紙である。返信を書きたい。が、宛先がわからない。
残念である。
私は読者にはできる限り返信し、掲載する際にはお会いしてきた。交流も続いている。それをまた記事にするので、私のノリが少しずつ読み手に浸透してきた。で、読者が私より上手になっている。
桜メールの彼女だけではない。
先日こんな連絡をいただいた。
「読者の金田と申します」
えっ、えっ、金田さんすか?