がん再々発で見えるもの

野中郁次郎と「失敗の本質」 (文:金田 信一郎)

「今日はあまりいいお話じゃなくて」

先日、がんセンターの内科医は私にそう切り出した。

えっ。今日は抗がん剤をやりに来ただけなんだけど……。

「先週のCT検査で気になるところがありまして」

って、その検査は外科が担当している。あさって、外科医が説明するはずだったのでは……。

つまり、緊急で伝えるべきことがあるわけだ。

私は身構えた。

パソコンに検査の画像が映し出される。

「ここに2センチのモコモコしたものがありまして、可能性としては転移、再発をまず考えたいところなんですね」

表現がまどろっこしいが、要するに2センチのガンが再発したわけだ。

昨年末、ガン再発の手術をしている。その時は1個だったが、今回は4個も出てきた。

ガンの再々発ということだ。

思い返せば、最初に食道ガンになったのは5年前のこと。だが、かなり時間がたって、今回、離れたリンパ節に転移した。そのためステージは「4b」となった。

最悪のランクである。

「おそらく手術はできません」

はー、アウトだわ。

で、こうした場合、ガンの増殖を抑えるため、抗がん剤治療が行われる。

ま、延命措置だわな。

ところが、である。

「で、今日の抗がん剤治療はいったんお休みになります」

ええっ!

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