手術から3日後の午後、ようやく水を飲むことが許可された。
恐るおそる、ペットボトルの水を口にふくんでみる。
特に問題ない。そのままペットボトルの半分ほどを飲んだ。
回診にやって来る医師が、「今日はペットボトル1本ぐらいにしておいてください」と言う。
少しペースが速いかもしれない。まあ、1本半ぐらいは問題ないだろう。
担当医の外科F先生が回診に来る。
「水、飲めてますか?」
「はい。これぐらい」
そう言ってペットボトルを指さした。机の上のボトルは残りが少なくなっている。
「じゃあ、明日から食事を始めましょうか」
ようやく、予定が再開される。
「ただ、いきなり食べると戻してしまうこともあります。よく噛んでもらって、量も半分までにしてください」
胃の一部を削っているため、1カ月ほどは食べられる量が回復しないこともある。
看護師が、胃ガン患者に渡している「手術後の食事の取り方」というパンフレットを持ってきてくれた。スプーン半匙の量をすくい、時間をかけてかみ砕く。半分の食事を30分かけてとるように指示されている。医師からは「胃ガンの手術よりは(症状が)軽い」とは言われていたが、それでも、食事はこのパンフレット通りに再開することになる。