検査結果が出る前日の夜、がんセンターの敷地内にあるホテルにチェックインした。がんセンターを受診する時は、大抵、こうして前日から病院近くのホテルに宿泊する。
通常は駅前のホテルを利用するが、今回はがんセンターに隣接するパークサイドホテルにした。
窓の外には広大な公園が広がり、静かな闇に沈んでいる。
明日の結果は、ほぼ間違いなくガンという判定になる——。そう頭では分かっている。
だが、心のどこかに「もしかしたら、違うんじゃないか」という思いが残り、幾度となく頭をかすめていく。
深夜0時を回る。窓の下を走る車はほとんどなくなった。道までも闇に暮れようとしている。
眠れぬまま時間が過ぎていく。睡眠剤をまた一錠、口に放り込む。
やがて意識が朦朧として、心は闇に落ちた公園を彷徨い歩く。
翌朝、結果はあっけなく告げられた。
「検査の結果ですけど、PET(CT)、ここが光っていますね」
内科のK先生のパソコンに腹部のCT画像が表示される。黒いネガフィルムのような映像に、不気味に赤い楕円が浮かび上がっている。
「25㍉ですね」
楕円の長い方の直径は25㍉と表示されている。前回は15㍉と聞いていただけに軽いショックを覚える。
考えてみれば、15㍉という数字は、胃に飛び出した部分の直径なので、裏側に隠れていたリンパ節の腫瘍はもっと大きかっただろう。
だが、それにしても、4カ月前にCTで見つからなかった腫瘍が、今では25㍉になったわけだ。
では、生検はどうなったのか?