再発の行方(5)

文:金田 信一郎

検査結果が出る前日の夜、がんセンターの敷地内にあるホテルにチェックインした。がんセンターを受診する時は、大抵、こうして前日から病院近くのホテルに宿泊する。

通常は駅前のホテルを利用するが、今回はがんセンターに隣接するパークサイドホテルにした。

窓の外には広大な公園が広がり、静かな闇に沈んでいる。

明日の結果は、ほぼ間違いなくガンという判定になる——。そう頭では分かっている。

だが、心のどこかに「もしかしたら、違うんじゃないか」という思いが残り、幾度となく頭をかすめていく。

深夜0時を回る。窓の下を走る車はほとんどなくなった。道までも闇に暮れようとしている。

眠れぬまま時間が過ぎていく。睡眠剤をまた一錠、口に放り込む。

やがて意識が朦朧として、心は闇に落ちた公園を彷徨い歩く。

翌朝、結果はあっけなく告げられた。

「検査の結果ですけど、PET(CT)、ここが光っていますね」

内科のK先生のパソコンに腹部のCT画像が表示される。黒いネガフィルムのような映像に、不気味に赤い楕円が浮かび上がっている。

「25㍉ですね」

楕円の長い方の直径は25㍉と表示されている。前回は15㍉と聞いていただけに軽いショックを覚える。

考えてみれば、15㍉という数字は、胃に飛び出した部分の直径なので、裏側に隠れていたリンパ節の腫瘍はもっと大きかっただろう。

だが、それにしても、4カ月前にCTで見つからなかった腫瘍が、今では25㍉になったわけだ。

では、生検はどうなったのか?

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