「大企業はダサい」

米ドラマ・フレンズ (文:金田 信一郎)

米人気ドラマ「フレンズ」で有名な男優マシュー・ペリー氏の死が、1年以上経った今もメディアをにぎわしている。

享年54。死因は薬物の過剰摂取だった。麻酔薬ケタミンの入手や摂取に関わった医師や病院関係者、秘書など5人が起訴され、裁判が続いている。

「このバカ、いくらまで払うつもりなんだ」

医師や病院関係者は、メールでそんなやりとりをしていた。

世界中で再放送が続いているドラマは、俳優たちに巨額の収入をもたらしている。日本では地上波やWOWOWで放送され、中国でも近年、再放送された。

そのペリー氏は、周囲の人々に「カモ」にされていたわけだ。

フレンズの放送が米NBCで始まったのは1994年のこと。ニューヨークのアパートで暮らす男女6人の若者が、仕事や恋愛の物語を繰り広げていく。

男性は3人で、売れない役者、研究者、会社員。そこにウェートレス、ダイナー調理人、マッサージ師の女性3人が加わり、苦楽を共有しながら生活していく。

当時の若い世代は「ジェネレーションX」と呼ばれ、冷戦終結やリストラ、就職難など社会構造の変化の真っただ中で社会に出た。そんな「不安を抱えた世代」を軽快なコメディーに仕上げている。

1年目(シーズン1)から上昇した人気は、年々勢いを増していき、2004年のシーズン10の最終回は5250万人が視聴した。

歴史的ヒットとなった背景には、同世代の俳優6人がドラマと同様に、深い絆でつながる友人関係を構築していったことがある。

ドラマの役が、そのまま本人たちの人生と重なっていった。そして、回が進むごとに、俳優の個性と役柄が絡まったストーリー展開となり、視聴者の共感を高めた。

シーズン2の終了時、6人の俳優は団結して巨大ネットワークとの交渉に臨んだ。「ギャラを全員、同額にすべき」と主張したのだ。

出演した女優のリサ・クドロー氏はこう振り返っている。

「もし誰かが誰かより高いギャラをもらっていたらわだかまりが生まれて、演技に影響を与える」

ギャラの共同交渉は、最後まで貫かれた。出演料は上昇を続け、当初は1話30万円だった出演料が、終了時に100万ドル(1億2000万円・当時)になっていた。

それは、当初20〜30代だった6人の俳優の人生を変える。

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